九頭竜大社からのお知らせ
2022年4月1日 公式ブログ
みんな何かありますね
ある日の午後のことです。社務所から境内の様子を眺めておりました。毎月お参りをなさる女性の〇〇さんと、おそらく初めてのお参りと思しき男性の方がお話をなさっていました。
男性の方がお帰りになった後、〇〇さんと境内でこんな立ち話をいたしました。
「〇〇さん、こんにちは。」
「ああ、正浩さん。こんにちは。」
「今日は鳥の鳴き声がよく聞こえてきますね。境内では四季を通していろいろな音が聞こえるのですが、こういう音も私はとても好きです。今は鳴いていないけれども、山鳩もよく鳴きますよ。」
「ええ、山鳩。よく鳴きますよね。私も鳥の鳴き声は好きです。そういえば正浩さん、もうツバメが飛んでいますね!」
「ああ、ツバメ、もう飛んでいますか?私は気付いていませんでした。」
「ええ。もう飛んでいましたよ。本当にこちらの境内は気持ちいいです。」
「そういえばさっき男性の方とお話しになっておられましたね。初めてのお参りの方でいらしたのですか?」
「そうなのですよ。いろいろなことがおありの方でした。奥様がお病気で、いくつも病院を巡られたようです。その病院を巡っておられるさ中にある人から九頭竜大社のことを聞いて、今日初めてお参りすることが出来たそうなのです。大神様は、奇縁でもって人を引かれますよね。」
「ああ、あの男性はそのような方でいらしたのですか。さっき受付で少しだけやり取りをしたのですが、明るい感じでお話しになる方で、そのようなことがおありとは想像もいたしませんでした。やはり人は、見た目だけでは分かりませんね。」
「正浩さん、本当にそうですよ。一見とても幸せそうに見える方でも、みんなそれぞれ、何かしらおありなのだと思います。それは私は実感いたしますね。」
「はい。本当にそうですね。」
「奥様がお病気でいらっしゃるということでしたので、粉薬のようにして飲む護符と御霊水をお勧めいたしておきました。御霊水はペットボトルに汲んでお持ち帰りになるとよろしいですよ、と。」
「ああ、とてもよろしいことですね。」
「正浩さん、本当に人生はいろいろありますね。ずっと明るく幸せに過ごせればいいのですが、多くの場合なかなかそうはいきません。明るい時もあれば暗い時もあるのですね。その暗い時に、大神様の方に向くきっかけがあるように思うのです。そのきっかけをつかめるかどうかは、その人次第だと思いますけれどもね。」
「ああ、そうかもしれませんね。」
「私も以前、仕事がとても大変だった時期があるのです。会社で3つも部署を掛け持ってしまったのです。」
「〇〇さんは有能でいらっしゃいますから、周りの人達に頼られるのでしょうね。」
「いえいえ、そうではないのです。頼まれた仕事は何でも引き受けるものだと思い込んでしまっていたのです。頑張りすぎていました。断る勇気を持てなかったのですね。」
「なるほど。」
「そんなとても苦しかった時に、九頭竜弁財天大神様が奇縁でもって私を引いてくださいました。大神様には本当にお助けいただいて、こうやってずっと月参りを続けさせていただいているのです。」
「ああ、そうでいらっしゃったのですね。」
「御神木の近くに一本草が生えていたのです。冬になると枯れてしまいますね。でも春になって3本にも4本にもなって生えてきているのです。それを見て私、思ったのです。人生にはいろいろな試練があるけれども、それを乗り越えて新しいステージに入った時には、新たな素晴らしい何かが生まれてくるのだと。」
春の鳥のさえずりが聞こえる境内で、素敵なお話をお聞かせいただきました。
どうぞこれからもよきお参りをなさいますように。
書籍『九頭竜大社にお参りする人達から聞いた50の素敵なお話』