九頭竜大社からのお知らせ
2022年8月15日 公式ブログ
本当の思い
ある日の朝のことです。ある女性がお参りになりました。いつもはご夫婦で月参りをなさっているのですが、今日はお一人でお参りです。受付で私にお話しくださいました。
「正浩さん。正浩さんが出しておられる本は、すべてご自分で書いておられるのですか?」
「はい。すべて自分で書いております。」
「そうなのですね。私はいつか出版社から本を出して、書店にたくさん私の本が並んで、多くの人達にお読みいただきたいな、という願いを持っているのです。商業出版の場合、出版社の意向が強く出てなかなか自分の文章では書き切れないというイメージがあったのですが、関係の方々にお会いして話を聞くと案外そうでもないみたいなのです。九頭竜弁財天大神様には、そのようなお願いもさせていただいているのです。」
「それは素敵な願いでいらっしゃいますね。いつか叶うといいですね。そういえば少し前にご著書をご奉納くださいましたね。大神様にお供えした後、すべて読ませていただきました。」
「ありがとうございます。あちらの本は自費出版なのですが、すべて私が書かせていただいているのです。」
「特攻隊員の方々の思いを書かれた本でしたね。どのような思いからあの本をお書きになられたのですか?」
「はい。数年前にある特攻隊員の記念館を訪れたのです。そこにはいろいろな展示があったのですが、その中に特攻隊員の方々が家族に残した手紙の数々があったのです。ガラスケースの中に入れられて展示されていたのですが、私は何時間もかけてそれらの手紙をすべて読んだのです。」
「展示されていた手紙を全部読まれたのですか!」
「はい。全部です。それで私は思ったのです。これらの手紙には必ずしも特攻隊の方々の本心のすべては書かれていないのではないかと。」
「ああ、そうお感じになられたのですね。当時は検閲などもあるかもしれません。家族に迷惑が掛かったらいけないなどという思いもよぎられるのかもしれませんね。」
「はい。それで私は思ったのです。旅立ってゆかれた特攻隊の方々の本当の思いを知りたいと。本当はどのような思いでその時代を生きて、どのような思いで旅立ってゆかれたのかと。それで実在された方々のことを取材して、文章にして、記念館に寄贈したのです。」
「なるほど。」
「するとその私の文章の数々が館長さんの目に留まって、〇〇さん、何としてもこれを本にして出しましょうよ、と。でも私は当初、本にする気などさらさらなくて、文章にはしていたものの何ともまとまりのないものでした。でも館長さんが是非にとおっしゃってくださったものですから、一年かけて編集してあの本となったのです。」
「登場人物の△△さんは、もちろん実在された方でしょう。特攻で飛び立ってゆく時に、故郷の上空で奥さんに向かって翼を振ってさよならを伝えられた、というシーンもありましたね。あれも実話に基づくのですか?」
「はい。たとえば家族との団らんのシーンなどはどうしても私の想像が入るのですが、あのようなエピソードは本当にあったことです。」
「〇〇さんの思いが伝わってくる素晴らしい本でした。」
「ありがとうございます。この本に登場される方々の思いもそうですし、無数のご縁があって、それこそ目に見えない大神様の守護もあって、一冊の本になります。文章は私がすべて書きましたが、本当にいろいろな方々にご協力いただいて、この一冊の本になりました。正浩さんも本をお書きになる方ならお分かりいただけるでしょう?」
「はい。それはよく分かります。自力だけで一冊の本を書き切ることは出来ません。無数のご縁は私も本当に感じるところです。何か自分を超えた大きな力に書かせていただいたと、一冊の本を書き切る時は、本当にそんな実感があります。」
「そういうものですよね。あの本はその記念館で販売されているのですが、ありがたいことに、もうこれは九頭竜弁財天大神様のお力もあると思うのですが、本当に多くの方々にお求めいただいているのです。」
「そうだろうと思います。本当に思いの込もったいい本でしたから。」
「今日は私、一人でお参りでしょう。夫はまさに今、富士山に登っているのですよ。日本で一番高いところにです。たまには一人のお参りもいいな、と思って来ました。」
「そのご主人が営んでおられる会社もご著書に協賛されていますよね。あとがきに書かれていました。以前ご本殿でお祓いをお受けになったことがあったので、会社名を覚えていて気づきました。」
「あはは。そうなのですよ!」
9回まわるお千度をされ、おみくじをお受けになられました。どのお言葉をいただかれたかまでは分かりませんでしたが、とてもにこやかな表情をされてお帰りになりました。
よいお参りでした。またのお参りをお待ち申し上げます。